高い抹茶ほど、抹茶ラテに向いているのか
海外のお客様から、ときどきこんな質問をいただきます。
「抹茶ラテにおすすめの抹茶はどれですか?」
私はこれまで抹茶ラテにするのであれば、それほど高価な抹茶にこだわらなくてもよいのではないか?と言ってきました。
特に牛乳をたっぷり入れ、さらに砂糖やシロップを加えるのであれば、抹茶そのものが持つ繊細な香りや旨味の違いは分かりにくくなります。
とはいえ、本当にそうなのでしょうか。
ちょうど夏ですので、今回は少し「夏休みの自由研究」のような気分で実験してみることにしました。
(日本では夏休みといえば自由研究なのです。海外はどうなんでしょう?)
今回比較する抹茶は、どちらも宇治抹茶です。
価格差は約3.8倍です。
果たして、この差は抹茶ラテにしても分かるのでしょうか。
早速作ってみました。
条件を揃えて比較する
今回はできるだけ条件を揃えました。
抹茶:各2g
湯の温度:80度
湯の量:30cc
牛乳:120ml
氷:同量
抹茶の量を高価格品だけ少なくしたり、安価な方を濃くしたりすることはしていません。
同じ条件で作り、純粋にラテにしたときの違いを見てみます。
作った時間も同じです。
同時に2杯点ててからグラスにミルクをそそぎ、氷を入れてオンザロックで
抹茶を注ぐという当店の推奨レシピです。
まずは見た目でクイズ

QUESTION
さて、どちらが
1kg換算156,600円の祥玉でしょうか。
左でしょうか。
右でしょうか。
牛乳と混ぜる前の抹茶そのものを比べれば、色や香りには違いがあります。
しかし、120mlの牛乳と合わせると、その差はかなり小さくなって見えます。
どっちか分かりますか?
正解は・・・
チッ
チッ
チッ
チーーーーーーン!
ANSWER
左が祥玉、右が白圭です。
よく見ると、祥玉の方が緑色が濃く、発色の良さは確かに感じられます。
見た目だけを比べるのであれば、祥玉の方がきれいです。
ただし、白圭だけを単独で見れば、抹茶ラテとして十分に美しい色をしています。
実際、白圭はすでに抹茶ラテや製菓用途にも使われている抹茶です。
では次の問題です。
この抹茶ラテをどちらも混ぜてみました。
混ぜてしまうと、さらに分かりにくくなる

次に、両方をしっかり撹拌してみました。
こうすると違いはさらに小さくなります。
見た目だけなら1kg15万円もする祥玉を使っているとは思えないですよね。
もちろん並べて比較すれば、左の祥玉の方が色は濃い。
しかし、片方だけを出されて「これは4万円か15万円か」と聞かれたら、見た目だけで判断するのはかなり難しいと思います。
原価計算をするとこんな感じ
・白圭の抹茶ラテ:抹茶82円、牛乳(明治おいしい牛乳)40円=122円
・祥玉の抹茶ラテ:抹茶313円、牛乳(明治おいしい牛乳)40円=353円
個人使用なら1杯343円の祥玉でも高すぎることはないですが、飲食店さん向けのメニューとして考えると原価が高い。
1杯800円〜1000円という高価格帯です。
メニュー開発としては少し悩みどころです。
無糖で飲んでみる
次は味も比較してみます。
まずは砂糖を加えず、そのまま撹拌して飲み比べました。
香りについては、祥玉の方がやや上です。
口に含んだときに薄茶で点てた時の覆い香が微かに感じられます。
ここには高価格の抹茶らしい違いがあります。
ただし、味になると話が変わります。
今回は、濃厚でそのまま飲んでもおいしい牛乳を120ml使っています。
それに対して抹茶を溶いた湯は30ml。牛乳はその4倍の120mlです。
そのため、口に入れた瞬間の印象はどうしても牛乳が強くなります。
今回は抹茶の違いを感じるためにかなり神経を使ったテイスティングをしました。
それにより祥玉の覆い香を感じ取れたと言っていいでしょう。
薄茶として飲めば白圭は苦みがあります。
この抹茶は私たちが吉田銘茶園にラテ用に使える買い求めやすい価格帯で作ってもらった抹茶です。
やぶきたとおくみどりの合組ですが、茶道の練習用の抹茶としては十分使えて、
製菓用やラテなどの加工用なら上位グレードとして作ることが出来ました。
一方で祥玉には苦みは殆どありません。
旨味がしっかり乗ったまろやかな抹茶です。
普段抹茶を飲んだことがない人に飲ませたら、
「抹茶ってもっと苦いと思ってた。全然苦くない。」
そう言わせることのできる抹茶です。
こうして抹茶そのものでは明確に違う2種類なのですが、
ラテにすると味の差はかなり小さくなります。
一般の人がどちらか片方を飲んでも、その違いは分からないと思います。
なぜ高級抹茶の良さが、ラテでは消えてしまうのか
祥玉は、苦味がほとんどなく、まろやかで、旨味の強い抹茶です。
薄茶として飲めば、その良さはよく分かります。
ところが牛乳と混ぜると、その「まろやかさ」や「旨味」という長所が、牛乳の中に入ってしまいます。
高級抹茶としての良さがなくなるわけではありません。
ただ、その良さを感じ取るための条件ではなくなってしまうのです。
これが私が、抹茶ラテで飲むなら高価な抹茶にこだわらなくてもいいと伝えている理由です。
ラテにした祥玉に残る分かりやすい長所は、色の美しさと、わずかに強い香りでした。
白圭の苦味が、ラテでは長所になる

一方の白圭は、やぶきたとおくみどりを合組した抹茶です。
祥玉に比べると、少し苦味と渋味があります。
薄茶だけを基準に考えれば、「苦味が少ない」「まろやか」「旨味が強い」といった要素が海外の方には高く評価されることがあります。
茶道としてならこの苦みは、先に和菓子といただくことで口の中で苦みが相殺されます。
しかし、抹茶ラテになると評価軸が変わります。
白圭の持つ適度な苦味と渋味が、牛乳に負けずに残ります。
そのため、飲んだときに「抹茶を飲んでいる」「抹茶の味」という輪郭が出ます。
ここが今回、最も面白かったところです。
薄茶では欠点にもなり得る苦味や渋味が、抹茶ラテでは長所になることがある。
高い抹茶ほど、すべての飲み方で優れているとは限らないということです。
さらに砂糖を加えてみる
そして、甘みを加えてもう一度比較しました。
どちらもガムシロップ8gを加えます。
ここでは違いがさらにはっきりしました。
祥玉の持つ繊細な旨味やまろやかさは、牛乳に加えて甘味が入ることで、さらに分かりにくくなります。
いわゆるスーパーやコンビニなどで販売している抹茶ラテと変わらない味わいです。
これだけを飲んだ人はまさか1kg15万円もする抹茶を使っているとは思わないでしょう。
一方、白圭の苦味と渋味は、甘味が入っても残ります。
むしろ甘さの中に少し苦味があることで、抹茶らしさを感じやすくなりました。
少なくとも今回の条件では、加糖した抹茶ラテについては、白圭の方が「抹茶を飲んでいる」という印象が分かりやすく感じられました。
最後に、もう一問

FINAL QUESTION
では、この抹茶ラテはどちらでしょう。
祥玉でしょうか。
白圭でしょうか。
正解は・・・
チッ
チッ
チッ
チーーーーーーン!
はい、残念!
ANSWER
祥玉1gと白圭1g。
半分ずつ使った抹茶ラテです。
ちょっと引っ掛け問題でしたが、絶対に分からないと思います。
プロの私でも言われなければ分かりません。
自分で作っていて「変わらないなーーー」と思ってました笑
もうちょっと緑が濃く出ると思ったんですけどね。
牛乳の白さに負けました。
使った抹茶も合計2gで、牛乳の量と氷の量など条件は同じです。
こうして一杯だけを見ると、15万円の抹茶が半分入っているかどうかを見抜くのは、かなり難しいと思います。
ラテ用なら、高価な抹茶でなくてもよい
今回、実際に比較してみて、私が以前から感じていたことは大きく変わりませんでした。
抹茶ラテにするのであれば、必要以上に高価な抹茶を選ばなくてもよいと思います。
これは「安い抹茶なら何でもよい」という意味ではありません。
抹茶は品質の幅が非常に大きく、他店で販売されている最低価格帯の商品について私は品質を判断することができません。
何が入っているのか、誰が作っているのか分からないからです。
あくまで、丸竹夷で品質を確認したうえで取り扱っている抹茶の中から選ぶのであれば、ラテ用途ではまず手頃な価格帯から試していただいて十分だと考えています。
特に加糖するのであれば、その傾向はさらに強くなります。
その中で1商品紹介するなら私は吉田銘茶園と作ったこの白圭を使って下さいと言います。
一般の人はもちろん、飲食店さんにも一杯あたりの原価が122円とお値打ちです。
祥玉のような高級抹茶の価値は、高級抹茶にしかない繊細な覆い香、旨味、余韻を感じられる飲み方でこそ分かりやすくなります。
反対に抹茶ラテでは、牛乳や砂糖の中でも消えない苦味や渋味、色の強さといった別の要素が重要になります。
CONCLUSION
「高い抹茶ほどラテに向いている」のではなく、
「ラテにはラテに向いた抹茶がある」。
今回の夏の自由研究は、そんな結果になりました。
丸竹夷と吉田銘茶園で作ったラテ用抹茶
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「祥玉園」の名を冠した自信作
Matcha so delicious, it nourishes the soul.





