祇園祭に息づく一碗の抹茶。菊水鉾が伝える「水」の文化
「私にとって祇園祭は、お盆やお正月よりも大切な一年最大の行事です。」
というわけで、こんばんは。ただいま7月14日23時。
祇園祭で賑わう京都でこのコラムを書いています。
今日から京都市内では祇園祭の前祭宵山が始まりました。
私にとって一年で最も特別な「祇園祭」
私は抹茶専門店を営む一方で、「京都アンテナショップ 丸竹夷」として、京都の文化や工芸、季節の営みを伝えることも大切な役割だと考えています。
だからこそ、私にとって祇園祭は特別な存在です。
とはいえ、この店をやる前から特別な行事ではありましたが。
お盆やお正月を一年の節目と感じる方は多いと思いますが、私にとって一年で最も心が躍るのは七月の祇園祭です。
新町通りの電柱に黄色いネットが張られ、町に山鉾が建ち始めると、京都の空気は一変します。
祇園囃子が響き、宵山には提灯の灯りが町を包み、巡行へ向けて人々の気持ちも高まっていく。
その一か月間は、京都という町全体が何百年もの歴史を生きているように感じられます。
「今年も京都の夏が始まった」そう感じるのが宵山です。
祇園祭とは──疫病退散を願う京都の祭礼

祇園祭の起源は平安時代、疫病が流行した際に人々の無病息災と疫病退散を願って行われた御霊会(ごりょうえ)にあります。
現在では京都を代表する祭りとして世界中から多くの人が訪れますが、その根底には「人々の命と暮らしを守る」という祈りが、千年以上にわたって受け継がれています。
豪華絢爛な山鉾巡行が有名ですが、その前夜祭にあたる「宵山」では、それぞれの山鉾町が訪れる人々を迎え、町全体が祭りの舞台となります。
宵山がつくる京都の夏

山鉾巡行の華やかさも見事ですが、私が毎年楽しみにしているのは、その前夜祭にあたる「宵山」です。
前祭の宵山は毎年7月14日から16日の3日間、後祭は7月21日から24日の3日間にわたり行われます。
山鉾町には提灯が灯り、祇園囃子が流れ、以前に比べ数は減りましたが町家では屏風や美術品を披露する「屏風祭」も見学できます。
町を歩くだけで京都の歴史や文化、人々の営みを感じることができる、特別な時間です。
そんな宵山の楽しみの一つが、前祭の菊水鉾で開かれる茶席です。
菊水鉾と名水「菊水の井」

今回私が訪れたのは、前祭の菊水鉾の茶席です。
何年ぶりだろう、久々に行かせていただきました。
菊水鉾の名前は、町内にあったと伝わる名水「菊水の井」に由来します。
この井戸は、茶の湯の歴史とも深い関わりがあります。
かつて、千利休も師事した茶人の先覚者である武野紹鴎(たけのじょうおう)がこの水をこよなく愛し、この地に茶亭「大黒庵」を結んだと伝えられています。
つまり菊水鉾の茶席は、単なる祭りの催しではありません。
名水を大切にし、茶の湯の文化を受け継いできた町だからこそ、今日まで茶席が続けられているのです。
私もその茶席で一服いただきました。
掛軸や花、菓子、静かに湯が沸く釜。
宵山の賑わいとは対照的な、ゆったりとした時間が流れていました。

抹茶をいただく楽しみの一つが、菊水鉾の茶席といえば欠かせないお菓子「したたり」
烏丸御池にある和菓子店「亀廣永」の代表銘菓「したたり」が菊水鉾では茶菓子として使われます。
そして、この菊の柄の皿も持ち帰ることができるので茶席に訪れた人にも好評です。
家に何枚あるだろう、、、これで5枚目かもしれません。
外ではちょうど菊水鉾の祇園囃子が響き、多くの人で賑わう宵山。

茶席で感じた、水がつくる抹茶の味
茶席と言っても会所であるマンションの2階部分を使用したテーブル席の並ぶ簡易的な席なので、決して静かとは言えませんが、
外の宵山の熱気が少し感じられるような賑わいです。
席の前ではお点前が披露され、その一服をいただきながら、私は改めて「水」の存在について考えました。
抹茶の主役は、茶葉だけではないということです。
一碗の抹茶のほとんどを占めるのは水です。
どれほど素晴らしい抹茶でも、水が変われば旨味や甘味、香り、余韻は大きく変わります。

私はこれまで、生産者を訪ね、茶畑を歩き、品種や製法を学びながら抹茶を選んできました。
しかし、その魅力を最後に引き出すのは、やはり水なのだと、この茶席で改めて実感しました。
京都には今も名水と呼ばれる井戸が数多く残っています。
梨木神社の「染井」、御香宮神社の「御香水」、そして菊水の井。
良質な水があったからこそ茶の湯が育ち、多くの茶人が京都に集い、日本の茶文化が磨かれてきたのでしょう。
菊水鉾の茶席は、その歴史を今に伝えてくれる貴重な場所でもあります。
抹茶は茶葉だけでは完成しない

私は「旅する抹茶」というブランドを通して、生産地を巡り、その土地の風景や生産者の想いを伝えてきました。
けれど今回改めて思いました。
旅するのは、茶畑だけではない。
京都の町を歩き、祭りに触れ、水の歴史を知ることもまた、抹茶を知る旅なのだと。
菊水鉾でいただいた一碗は、単に抹茶を味わった時間ではありませんでした。
その一碗には、名水を愛した武野紹鴎の時代から受け継がれてきた茶の湯の精神、
疫病退散を祈り続けてきた祇園祭の歴史、そして京都という町が大切に守ってきた文化が静かに息づいていました。
抹茶は、茶葉だけでは完成しません。
良い水があり、器があり、人がいて、そして文化があります。
京都文化を一碗の抹茶とともに

菊水鉾でいただいた一碗は、単に抹茶を味わった時間ではありませんでした。
そこには、武野紹鴎が愛した名水の記憶があり、千年以上続く祇園祭の祈りがあり、京都という町が守り続けてきた文化がありました。
私は抹茶専門店であると同時に、京都アンテナショップでもあります。
だからこそ、これからも抹茶だけを紹介するのではなく、その背景にある京都の歴史や文化、人々の暮らしも一緒に伝えていきたいと思っています。
一碗の抹茶には、宇治の茶畑だけでなく、京都という町そのものが映し出されている。
菊水鉾の茶席は、そのことを改めて教えてくれる、忘れられないひとときでした。
それではまた次回。
あ、そうだ。
来週7月23日(木)と24日(金)は祇園祭後祭の宵山と巡行の為、臨時休業となります。
アンテナショップとして祇園祭を全力で堪能せていただきます。
店主厳選の5選
今回のブログで語った「思想」を、ぜひあなた自身の五感で確かめてください。数あるラインナップの中から、丸竹夷が誇る「本物の宇治」を象徴する5点を厳選しました。比較的買いやすいお値段のものから高価格のものまで。どうぞ抹茶選びの参考にしてみてください。
「土壌の力」が凝縮された、圧倒的な旨味の衝撃。ー宇治という特別な風土が、長い年月をかけて茶葉に蓄えさせた栄養。それを一切妥協なく形にしたのがこの「大極」です。
職人の五感が描き出した、完璧なる「調和」。ー異なる個性を組み合わせ、単体では成し得ない高みへと昇華させる「合組」の極致。まろやかなコクの中に、幾重にも重なる華やかな香りが立ち上がります。
450年の歴史が支える、揺るぎないスタンダード。ー「本物」を日常に取り入れたい方に、私たちが自信を持って勧めるのがこちらです。
数百年の「土地の記憶」を味わう。ー農林水産大臣賞を数多く受賞した吉田利一さんの茶園から摘まれた茶葉飲みが使用されています。
「合組」の概念を覆す、究極のマスターブレンド。ー化学肥料に頼らず、茶葉そのものの純粋なポテンシャルを極限まで高めた逸品です。




