抹茶だけが高くなったのではない
2026年、京都の一番茶で起きていること
2026年6月、京都府茶業会議所と全農京都府本部から、京都府産一番茶の取引状況が公表されました。
今回の速報から見えてくるのは、単なる抹茶価格の上昇ではありません。
抹茶の原料となる碾茶(てん茶)へ生産が集中する一方で、玉露、かぶせ茶、煎茶などの生産量が減少し、京都の日本茶全体の需給バランスが大きく変わり始めていることです。
碾茶は増産。それでも価格は上昇した
2026年の一番茶では、手摘みで製造される「宇治てん茶」の取引数量が9,130kgとなり、前年から48.7%増加しました。
はさみ摘みで製造される「初茶てん茶」も541,771kgで、前年から24.7%増加しています。
ところが、増産されたにもかかわらず、平均取引単価は下がっていません。
宇治てん茶
1kg当たり52,086円
前年比20.2%上昇
初茶てん茶
1kg当たり17,797円
前年比22.4%上昇
供給が増えてもなお価格が上がっていることから、増産分だけでは現在の需要を吸収できていない状況がうかがえます。
また、別紙に掲載された7茶種の取引数量を合計すると、宇治てん茶と初茶てん茶が占める割合は約77%に達します。
全農茶市場で取引される京都府産一番茶の重心が、急速に碾茶へ移っていることが分かります。

玉露、かぶせ茶、煎茶は減産へ
碾茶が増える一方で、それ以外の茶種は減少しています。
2026年の取引数量は、玉露が23,897kgで前年比19.7%減、かぶせ茶が23,216kgで18.3%減、煎茶が66,344kgで13.5%減となりました。
生産量の減少は、そのまま価格にも表れています。
玉露 1kg当たり14,249円
前年から約69%上昇
かぶせ茶 1kg当たり8,369円
前年から約82%上昇
煎茶 1kg当たり6,657円
前年から約48%上昇
さらに、ほうじ茶などの原料となる「刈直」は2,850円となり、前年から約138%上昇しました。
2024年の674円と比べると、わずか2年間で4倍を超える水準です。

現在起きているのは、抹茶だけの価格高騰ではありません。
碾茶への生産転換によって、玉露や煎茶、かぶせ茶、ほうじ茶原料まで供給が細り、日本茶全体の価格が押し上げられているのです。
茶畑は、すぐには増やせない
需要が増えたのであれば、茶畑を増やせばよいと思われるかもしれません。
しかし、茶は苗を定植してから本格的に収穫できるまで、一般に5〜6年ほど必要です。
加えて、京都府では生産者の高齢化や担い手不足によって、茶園面積そのものが年々減少しています。
一時的に注文が増えたからといって、翌年すぐに生産量を増やせる作物ではありません。
現在の価格上昇は、海外需要や抹茶人気だけではなく、長年続いてきた生産面積の減少、担い手不足、碾茶への生産転換が重なって生じています。
「以前の価格に戻る」とは考えにくい
もちろん、全農茶市場の平均単価は原料茶の取引価格であり、完成した抹茶や煎茶の小売価格が同じ割合で上昇するわけではありません。
製品価格には、仕上げ加工、選別、石臼挽き、包装、保管、輸送など、さまざまな費用が含まれます。
それでも、原料価格がこれだけ大きく動けば、茶商や小売店が従来価格を維持することは難しくなります。
2025年にも多くの商品で価格改定が行われましたが、2026年の取引状況を見る限り、相場が以前の水準へ簡単に戻るとは考えにくい状況です。
価格だけでなく、茶の背景を伝える時代へ
これから抹茶や日本茶を選ぶ際には、「高いか、安いか」だけではなく、産地、品種、摘採方法、栽培方法、用途まで見ていく必要があります。
薄茶として味わう抹茶、濃茶に適した抹茶、ラテや菓子に向く抹茶では、求められる品質も異なります。
限られた茶をすべて同じ基準で評価するのではなく、それぞれの茶が持つ個性や役割を丁寧に伝えることが、茶を販売する側にも求められています。
2026年の一番茶速報は、単に「抹茶がさらに値上がりした」というニュースではありません。
抹茶の生産にシフトしたことにより煎茶などの供給量が減りました。これによってこれまで安価に買えた煎茶がその値段では作れなくなり、市場から消えていくことになります。
例えば「柳(やなぎ・川柳)」として販売されている煎茶を作る際に出る大きな形状のものを集めたお茶のことなどを指すのですが、いわゆる進物用などで重宝される煎茶を選別するときに出た規格外品。ただ味は煎茶と変わらないのでお値段が安く京都でも家庭で飲む煎茶にはよく柳が選ばれたりします。
100g400〜500円くらいで価格も良心的でした。
それが、煎茶の供給量が減ることでこうした柳が取れる数も減ります。
すると価格が上がるわけですが、高いと買ってくれない商品でもあり茶問屋としては続けるのが難しく廃盤や取り扱い中止としてるところがこの春から増えました。
お茶の内容によっては玄米茶やほうじ茶の原料でもあるので、もちろんほうじ茶と玄米茶も価格が上がることになります。
昨今言われているスーパーにほうじ茶が売ってないという声はこうゆう背景が原因なのです。
京都の茶づくりの重心が碾茶へ移り、日本茶全体の価値と価格が見直され始めたことを示す数字として、捉える必要があります。
薄茶用ですがラテとしてもおすすめ
Uji matcha with a perfect balance of umami and astringency.
品種:やぶきた
(Stone-ground matcha made from Kodakami tea)
Made from Yabukita, Japan’s most widely cultivated tea variety, it offers a gentle aroma, balanced umami, and a clean finish.
(風味と苦味がしっかりした「加工用抹茶」)
(“Matcha for Processing” with a rich flavor and distinct bitterness)
A cup with a punch that holds its own against milk and sugar.



