【茶専門店が比較】その緑の粉は、本当に抹茶ですか?

石臼挽き宇治抹茶・インスタント緑茶・粉茶、そして70%抹茶ブレンドを実物で検証

世界的な抹茶人気の高まりにより、国内外で「Matcha」という言葉を目にする機会が増えました。
抹茶ラテ、スイーツ、アイスクリーム、健康食品。いまでは、さまざまな緑色の粉末が「Matcha」として紹介されています。

抹茶ブームという形では日本には2024年後半に波が来て、当店でも2025年早々には海外からの注文や問い合わせが毎月何十件と来るようになりました。
そして2026年春にはコンビニやファミレスなど至るところで抹茶のデザートを見るようになりました。

しかし、緑色をしたお茶の粉が、すべて抹茶というわけではありません。

よく似たものとして、インスタント緑茶、粉末緑茶、粉茶などがあります。見た目は同じ緑色でも、原料、製法、粒子、味わい、使い方はそれぞれ異なります。

抹茶と思って買ったものが抹茶じゃなかった。
そんな事が起こらないように、少し実験的な内容になっています。

今回は、まずはじめに3種類を実際に並べて比較してみました。

  • 石臼挽き宇治抹茶100%
  • インスタント緑茶(抹茶入り)
  • 粉茶

最初にお伝えしておきたいのは、インスタント緑茶や粉茶が、抹茶より劣った商品という話ではありません。
それぞれに適した用途があります。

問題になるのは、原料や製法の違いを説明しないまま、異なる緑茶粉末を一括して「抹茶」や「Matcha」として扱うことです。


抹茶は、単に緑茶を細かくしたものではありません

抹茶の原料となるのは、碾茶(てんちゃ)です。

碾茶は、摘採前の茶園に2週間から3週間ほど覆いをかけて日光を遮り、摘み取った茶葉を蒸した後、煎茶のように揉まずに乾燥させて作ります。

その碾茶から茎や葉脈などを取り除き、茶臼などで細かな粉末にしたものが抹茶です。

抹茶のできる工程については別のブログに詳しく書いています。
>>美味しい抹茶ができるまで

覆下栽培によって深い緑色の葉となり、渋味を抑えながら、うま味や甘味、青海苔や若葉を思わせる「覆い香」を引き出します。

つまり、煎茶などの茶葉をそのまま粉砕しただけでは、抹茶にはならないんです。


今回比較した3種類の緑茶粉末

1.石臼挽き宇治抹茶

今回使用した宇治抹茶は、碾茶を石臼で挽いたものです。

粉末を白い紙の上に置き、指や道具で伸ばしてみると、非常に細かな粒子が滑らかに広がりました。

色は明るさのある緑色で、粒子が均一なため、線を引いた部分にも大きな茶葉片は見られません。

石臼で挽いた抹茶は非常に細かいため、口に含んだ際にも粉っぽさが少なく、茶筅で点てると液体の中へ均一に分散します。

石臼挽き宇治抹茶・インスタント緑茶・粉茶の粒子比較


2.インスタント緑茶(抹茶入り)

今回使用した商品には、次の原材料が使われています。

緑茶エキス、デキストリン、抹茶、緑茶、酸化防止剤(ビタミンC)

茶葉だけを粉砕した商品ではなく、緑茶エキスを主体に、デキストリン、抹茶、緑茶を加えたインスタントタイプの緑茶です。
粉末の色は、黄色が強く感じられる黄緑色でした。

お湯を注ぐと、ほとんどかき混ぜなくても、すっと全体に広がります。
これは粒子が細かいだけでなく、水に溶けやすい緑茶エキスやデキストリンを主体としているためです。

インスタント緑茶

飲んでみると、味わいは明確に煎茶でした。

軽い渋味があり、後味はすっきりしています。
一方で香りは比較的弱く、急須で茶葉から淹れた煎茶ほどの香りの立ち上がりは感じませんでした。

抹茶のような覆い香や厚みのあるうま味ではなく、短時間で手軽に煎茶を楽しむための商品だと感じます。
ただしいろいろな成分が入っているので抵抗のある人は多いかもしれません。

とはいえ、オフィスなどで手軽に飲めるので、こうゆう緑茶も人気です。


3.粉茶(煎茶粉)

粉茶(煎茶粉)は、煎茶などの仕上げ工程で、ふるい分けられた細かな葉や粉状の部分です。

寿司店で「あがり」として使われることも多く、短時間で濃い味が出やすい特徴があります。

なぜこうゆうお茶が浸透したのかと言うと、これを呼んでいる海外の方には珍しい日本の慣習かもしれないのですが、
日本の多くの飲食店ではお茶が無料で出てくるという文化があります。

まぁ、これが日本のお茶単価を大きく下げた原因でもあると私は思っているのですが、お茶にお金を払うという感覚がなく、
しかも頼んだらすぐ出てくるというイメージを日本人は持っているのです。

お寿司屋さんの場合、頼まれたらすぐに出せるように使われているのがこの粉茶(煎茶粉)なのです。

急須に入れて20秒くらいでちゃんと抽出されます。
しかも製造過程で出る細かい茶葉を集めているのでコストも掛からず、お寿司屋さんに重宝されています。

粉末の状態を見ると、抹茶やインスタント緑茶に比べて粒子が非常に粗く、細かな茶葉の形を肉眼でも確認できます。

急須で淹れると、細かな茶葉が湯の中に浮きやすく、茶こしを通り抜けることもあります。
ただこれが口に残り抵抗を感じるようなことはありません。

粉茶は抹茶のように湯へ均一に分散させて飲むものではなく、基本的には茶葉から成分を抽出して飲むお茶です。

インスタント緑茶に比べて強い渋味と香りが出やすいため、口の中をさっぱりさせたい寿司店さんには相性抜群です。


粉の状態だけでも、違いは見える

3種類を並べると、色と粒子に明確な違いがありました。

石臼挽き宇治抹茶は、細かな粒子が滑らかに広がります。
当店で販売している抹茶なので品質には自信があります。

インスタント緑茶は、黄色みの強い黄緑色で、抹茶ほど鮮やかな緑ではありません。
ただし、水に溶けやすい成分を含むため、粉を伸ばした際には比較的滑らかに広がります。

粉茶(緑茶粉)は粒子が非常に粗く、茶葉の断片が残っていることがはっきり分かります。

ただし、色や粒子だけですべての商品を判定できるわけではありません。

現在は粉砕技術も進歩しており、煎茶などを非常に細かく粉砕した商品もあります。
回転寿司などでよく見かけますね。

また、抹茶の色も、品種、摘採時期、栽培方法、保管状態によって変わります。

見た目は判断材料の一つですが、決定的な証拠にはなりません。


左:宇治抹茶、右:インスタント緑茶


【ちょっと実験】宇治抹茶70%に、インスタント緑茶を30%混ぜてみました

次に、少し実験的な比較を行いました。

石臼挽き宇治抹茶70%に、先ほどのインスタント緑茶を30%加え、均一になるように混ぜたあと、
茶こしに通してみました。

写真の一番左が混合品、その隣が宇治抹茶100%です。


左から抹茶70%+インスタント緑茶30%、宇治抹茶、インスタント緑茶、粉茶

どうでしょう違いが分かるでしょうか?
写真では分かりづらいかもしれないのですが、混合品の方がわずかに黄色くなったように見えます。

しかし、実際に肉眼で見ると、大きな違いはありませんでした。
見た目だけなら100%抹茶です。

30%をインスタント緑茶へ置き換えても、外観上は宇治抹茶100%とかなり近い状態。

この結果から分かるのは、見た目だけで原料の構成を判断することは非常に難しいということです。

ちなみに、なぜこの実験をしたかというと、
噂で「煎茶の粉を混ぜて抹茶として販売している店がある」ということを耳にしたからです。
しかもいろいろな所で・・・

こうゆう消費者を騙す行為は絶対に駄目。
そして購入する側もちゃんと信頼の置ける店舗で購入してください。


点ててみると、味にははっきりした違いが出た

それでは次に、混合品を抹茶と同じように茶筅で点ててみました。

宇治抹茶70%+インスタント緑茶30%

色は宇治抹茶100%より、わずかに黄色みを感じます。しかし、写真だけを見れば、大きな差には見えないかもしれません。
何よりも今回使った70%の宇治抹茶が当店で100gあたり5,000円以上のランクのものだったのでベースが上質すぎたという点があります。

けれどもその一方で、味には変化がありました。

宇治抹茶100%に比べて、混合品は渋味と苦味が強くなりました。

うま味や香りの厚みはやや弱くなり、味の印象としては、茶道用の抹茶よりも、製菓やラテに使われる加工用抹茶に近づきました。

今回加えた商品は、純粋な粉末煎茶ではなく、緑茶エキスやデキストリン、抹茶、緑茶を含むインスタント緑茶です。

したがって、この実験だけで、市販されている加工用抹茶の製法や配合を再現したとは言えません。
先ほども言いましたがベースの品質がいいので製菓用に使う加工用抹茶に比べれば「飲める抹茶」になっています。

※私はラテなど加糖などせず薄茶としてストレートで飲めるものを「飲める抹茶」と表現しています。
加工用抹茶は飲めない抹茶です。あくまでも私の場合です。加工用抹茶を美味しいと飲む人もいます。

あくまで、抹茶以外の緑茶製品を一定量加えても、外見には大きな違いが現れにくい一方、味には変化が出ることを確認するための実験です。


飲用では強すぎる苦味が、製菓では役立つこともある

今回の混合品は、飲用すると渋味と苦味が強く感じられました。

しかし、これは菓子やラテに使った場合、必ずしも欠点とは限りません。

ケーキ、チョコレート、アイスクリーム、抹茶ラテなどには、砂糖や乳製品が多く使われます。

うま味が繊細な抹茶は、砂糖や乳脂肪の中に入れると、香りや味が埋もれてしまう場合があります。

一方で、ある程度しっかりした苦味や渋味があると、甘味の中でも味の輪郭が残り、
多くの人がイメージする「抹茶らしい味」を感じやすくなります。

そのため、飲用向けの抹茶と加工用抹茶では、必ずしも同じ品質や味が求められるわけではありません。

茶碗で飲んだ際に心地よい抹茶と、菓子に混ぜた際に存在感が出る抹茶は、評価の基準が異なります。

私が店頭で海外のお客様に”ラテとして飲むのかストレートで飲むのか”と尋ねているのは
飲み方によっておすすめする抹茶の選択肢が変わるからです。


粉茶やインスタント緑茶は、偽物ではありません

粉茶もインスタント緑茶も、それぞれ正しく表示されている限り偽物ではありません。

粉茶には、先ほどもお寿司屋さんの例を出したように短時間で濃く抽出できる良さがあります。

インスタント緑茶には、急須を使わず、どこでも簡単に煎茶を飲める利便性があります。

問題になるのは、こうした異なる緑茶製品を原料や製法の説明をせずに「抹茶」として販売することです。
現に販売していることです。

同じ緑色の粉であっても、

  • 碾茶を挽いた抹茶
  • 緑茶エキスを主体としたインスタント緑茶
  • 煎茶の仕上げ工程で生まれる粉茶

では、製法も用途も異なります。

例えば鶏肉でも、焼くのか煮るのかハムにするのか、と食べ方によって調理法や部位が異なるのと一緒です。

見た目だけでなく、何を原料にし、どのように作られた商品なのかを確認する必要があります。


抹茶を購入するときに確認したいこと

もちろん安心なので当店で買い物してくださいと、言いたいのですが、
これを呼んでいる抹茶好きな方は、いろいろな産地や製造者の抹茶を飲みたいと思います。
抹茶を選ぶ際は、価格や緑色の鮮やかさだけでなく、商品説明を確認してください。

確認したいのは、次のような点です。

  • 碾茶を原料としていることが説明されているか
  • 抹茶100%の商品なのか
  • 他の緑茶粉末や添加物を含む商品なのか
  • 産地、製造者、販売者が明確か
  • 薄茶、濃茶、ラテ、製菓など、用途が説明されているか
  • 保管方法や賞味期限が明記されているか

なお、正規の抹茶でも、原材料名が単に「緑茶」と表示されることがあります。
これは法に基づく表示で誤っているわけではありません。
私たちのオリジナル商品の抹茶も原材料名には「緑茶(国産)」と記載しています。

そのため、原材料欄だけで判断せず、商品説明、製造元、販売店の情報まで確認することが大切です。

また、価格が安いから偽物、高いから本物と単純に判断することもできません。

碾茶を原料とした正規の抹茶にも、茶道用から加工用まで、さまざまな品質と価格帯があるのです。


見た目が似ているからこそ、背景を見る

今回の比較で最も印象的だったのは、石臼挽き宇治抹茶にインスタント緑茶を30%混ぜても見た目には大きな差が出なかったことです。

もう少し黄色くなるかと思ったのですが、色はわずかに変わるだけで、味には明確な変化がありました。
しかし、写真や粉の外観だけで、原料の配合を正確に判断するのは困難です。

だからこそ、抹茶を選ぶ際には、鮮やかな緑色や「Premium Matcha」や「Ceremonial grade」といった言葉だけではなく、
原料、製法、用途、販売者の説明を確認することが重要です。

抹茶には抹茶の、インスタント緑茶にはインスタント緑茶の、粉茶には粉茶の良さがあります。

どちらが上で、どちらが下という話ではありません。

それぞれの違いを正しく知り、目的に合ったお茶を選ぶことが大切です。

丸竹夷では、商品名やブランド名だけでなく、原料となる茶葉、栽培方法、製造工程、
味わい、適した用途まで確認しながら商品をご紹介しています。

一碗の抹茶の背景にある時間と工程まで含めて、お伝えしていきたいと考えています。

 

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※ECサイトに移動します。

執筆者

成沢 崇

京都アンテナショップ丸竹夷 店主。

宇治茶・抹茶専門店として、宇治の茶農家や製茶問屋と対話を重ねながら、国内外のお客様へ抹茶をご紹介しています。

日々さまざまな抹茶を試飲し、その土地ならではの個性や背景をお伝えすることを大切にしています。