ラーメンを啜るのは礼儀ではない。抹茶もまた、海外で誤解されている。

Why Japanese People Slurp Ramen

 

ただいま夜23時。

こんな時間にラーメン食べたいなーという衝動に駆られてますが、こんな時間に食べたら間違いなく太るので、我慢しながらYouTubeでラーメン屋さんの仕込み風景を観てます。

海外の人からすると日本人のラーメンは抹茶同様に人気ですが、先日、日本在住の海外の人が外国人旅行者にYouTubeでこんな説明を見かけました。

「日本人がラーメンを音を立てて啜るのは、シェフに『美味しい』という敬意を伝えるためです。」

「ラーメンはまず①スプーンに麺を乗せる、②スプーンに乗せたラーメンを啜る、③そのスプーンの汁を飲む、これが正解!」

こんなことを言っていて思わず笑えてしまいました。

 

確かに、日本人はラーメンを啜ります。

でも、それは料理人への敬意を表すためではありません。

単純に、その方が食べやすいからです。

熱い麺を口へ運びやすく、空気も一緒に取り込めるため香りも感じやすい。子どもの頃から自然と身についた食べ方です。箸の使い方を一つひとつ意識しないのと同じように、ラーメンも自然に啜っています。

 

もちろん、啜らない人を失礼だと思うこともありませんし、静かに食べることがマナー違反という考えもありません。

日本人は「店主に美味しいことを伝えよう」と思いながら麺を啜っているわけではないのです。ただ単に美味しく食べているだけ。

 

 

外から見ると、文化は「ルール」に見えてしまう

海外では、日本文化をとても真剣に学ぼうとしてくれる人がたくさんいます。

その一方で、日本人にとっては生活の中で自然に身についたことが、「厳格な礼儀」や「必ず守るべき作法」として紹介されることがあります。

もちろん、それは日本文化を尊重したいという気持ちから生まれるものでしょう。

しかし、日本人からすると、

「そこまで難しく考えていないですよ。」

と思うことも少なくありません。

そして、このことは抹茶にもよく似ています。

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海外のMatcha Cultureを見ると驚くことがある

私は20年近く茶道や宇治抹茶に携わってきました。

だからこそ、海外のMatcha文化を見ると、日本との違いに驚くことがあります。

オーツミルクやアーモンドミルク、ココナッツミルクを合わせた抹茶ラテ。

マンゴーやストロベリー、パンプキンスパイスなどのフレーバー抹茶。

日本人から見ると、「抹茶の風味が消えてしまうのでは」と思うこともあります。
(と言いながら紅茶には砂糖やレモン、ミルクを入れているのが日本人なのですが)

しかし、それは現地の食文化やライフスタイルの中で生まれた楽しみ方です。

コーヒーやスムージーの代わりとしてこの数年で抹茶が日常に溶け込んでいるからこそ、日本とは違う発展をしたのでしょう。

私はその楽しみ方自体を否定するつもりはありません。美味しかったらそれでいいと思います。

ただ、一つだけおすすめできないことがあります。

それは、100℃の熱湯で抹茶を点てることです。

海外では、健康飲料というイメージから、コーヒーと同じように熱湯をそのまま注ぐケースをよく見かけます。
しかし、抹茶は非常に繊細なお茶です。

熱湯を直接注ぐと香りや旨みが弱くなり、苦味や渋味が強く出やすくなってしまいます。

70〜80℃程度のお湯で点てるだけで、甘みや旨み、香りの印象は大きく変わります。

これは茶道の作法ではありません。

抹茶を一番美味しく味わうための知恵です。

抹茶と煎茶は70℃〜80℃、玉露なら50〜60℃前後、ほうじ茶や番茶は100℃。

茶種や品質によって、それぞれ美味しさを引き出しやすい温度帯があります。

 

 

品質についても、大きな誤解がある

もう一つ気になることがあります。

それは品質です。

海外では、黄色っぽく苦味の強い抹茶が「Ceremonial Grade(儀式用・最高級)」という名前で販売されていることがあります。
(中には、日本で一般的にイメージされる抹茶とは、品質や製法が大きく異なるものも見受けられます。)

日本なら製菓用として使われるような品質でも、高級抹茶として紹介されるケースは決して珍しくありません。

もちろん、海外の消費者が悪いわけではありません。

本物を知る機会が少ないだけなのです。

 

 

本物を飲んだ瞬間、表情が変わる

だからこそ、本当に品質の高い宇治抹茶を初めて飲んだ海外のお客様の反応は、とても印象的です。

「苦くない。」

「砂糖を入れていないのに甘く感じる。」

「こんな鮮やかな緑色は初めて見た。」

「ミルクもシロップも必要ない。」

そんな言葉をいただくことが少なくありません。
これは抹茶を普段飲む機会のない私の友人も同じことを言いました。

抹茶に対するイメージそのものが変わる瞬間です。

海外の人たちは安い抹茶で満足していたわけではありません。
マーケットには種類が無いためそれしかなく、本物を知る機会がなかっただけなのです。

 

 

私たちが伝えたいこと

だから丸竹夷では、生産地へ足を運び、生産者と直接お話しし、自分たちで味を確かめた抹茶をご紹介しています。

海外で広がるMatcha Cultureを否定したいわけではありません。

ラテも、スイーツも、自由な楽しみ方の一つです。
ラーメンは啜った方が美味しいと日本人として思いますが、啜らずに食べても、それはそれで正解です。

ただ、抹茶に関しては私がプロである以上、その先にある「本来の宇治抹茶の美味しさ」も知っていただきたい。

それが私たちの願いです。

 

文化とは、暮らしの中で生まれるもの

ラーメンを啜ることも、抹茶を点てることも、外から見ると特別な文化や厳格なルールに見えるのかもしれません。

けれど、日本人にとってはそうではありません。

ラーメンは啜る方が食べやすい。

箸は使いやすいから使う。

抹茶は適した温度で点てる方が美味しい。

そこにあるのは、「礼儀」ではなく「暮らしの中で積み重ねられた知恵」です。

文化とは、誰かが決めたルールではなく、人々が長い時間をかけて育ててきた習慣なのだと思います。

だから私は、日本文化を難しい作法としてではなく、
その背景にある自然な知恵や美味しさとともに、これからも世界へ伝えていきたいと考えています。

ラーメンは深夜に食べるのは至高。だけど、太る。
このことだけは、文化の違いを越えて世界中の人に伝わるのではないでしょうか。

あーーーー、ラーメン食べたい。

 

English version: Why Japanese People Slurp Ramen — and What It Can Teach Us About Matcha Culture

執筆者
成沢 崇
京都アンテナショップ丸竹夷 店主

宇治茶・抹茶専門店として、宇治の茶農家や製茶問屋と対話を重ねながら、国内外のお客様へ抹茶をご紹介しています。
日々さまざまな抹茶を試飲し、その土地ならではの個性や背景をお伝えすることを大切にしています。

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