味覚の境界から考える、夏の抹茶ラテ
味覚というものは、不思議なものです。
タイやベトナムなどを訪れた日本人から、こんな話を聞くことがあります。
「緑茶だと思って買ったら、甘くて驚いた」
「口の中をさっぱりさせたかったのに、ジュースのように甘かった」
日本では、緑茶(この場合、煎茶や玉露のこと)といえば無糖の飲み物です。
自動販売機やコンビニエンスストアで緑茶を買うとき、砂糖が入っているかどうかを確認する人は、ほとんどいないでしょう。
しかし、東南アジアの一部では、外出先で購入するペットボトルのお茶は、甘い飲料として親しまれています。
ベトナムでは、無糖のお茶は自宅や食事の席で飲み、スーパーやコンビニエンスストアで買うお茶は、ジュースに近い感覚で選ばれることもあるそうです。
高温多湿な気候のなかで、冷たい飲み物から水分とエネルギーを同時に取る。
甘いお茶には、単なる嗜好だけではなく、その土地の気候や暮らし方も反映されているのかもしれません。
紅茶は甘くても、緑茶が甘いと驚く理由
甘い緑茶に驚く日本人も、紅茶には砂糖を入れてきました。
現在では無糖紅茶も一般的になりましたが、1990年代頃までの日本では、ペットボトルや缶の紅茶といえば、甘いものが主流でした。
紅茶に砂糖を入れることには違和感がない。
ペットボトルで買った紅茶が甘くてもそれはそれで飲めてしまう。
ところが、緑茶やジャスミン茶が甘いと、思わず戸惑ってしまう。
これは単純な味覚の違いというよりも、日本人の私の頭の中には、
「紅茶は甘くてもよい」
「緑茶は甘くないもの」
という無意識の分類ができているからなのだと思います。
飲み物のおいしさは、舌だけで決まるものではありません。
色や香り、ラベル、飲む場所、そして「こういう味のはずだ」という記憶も含めて、私たちは味を判断しています。
無糖だと思って口にした緑茶が甘ければ、たとえ味そのものが悪くなくても、強い違和感が生まれます。
抹茶は、すでに甘い飲み物になっている
一方で、同じ緑茶である抹茶は、海外では抹茶ラテとして広く飲まれています。
ミルクと砂糖を合わせた抹茶ラテは、日本の茶道における抹茶とは異なる飲み物です。
しかし、抹茶のほろ苦さや香りは、ミルクや甘さとの相性がよく、抹茶を初めて飲む人にも親しみやすい入口になります。
日本でも抹茶ラテといえば加糖されたものが主流でした。
私もこの店をオープンした10年前には飲食部門で抹茶ラテの提供をしていましたが、
砂糖入りの飲み物として販売し、無糖は扱っていませんでした。
当時、というほど年月が経っていませんが、数年前までは無糖の抹茶ラテというものは日本も少なかったように思います。
これが最近では、甘さを控え、抹茶そのものの香りや苦味を楽しむ人も増えてきました。
最初は甘い抹茶ラテから入り、次第に砂糖を減らし、やがて無糖の抹茶や薄茶を飲むようになる。
スペシャルティコーヒーが、ミルクや砂糖を楽しむ文化から、豆の産地や品種、精製方法の違いを味わう文化へと広がったように、抹茶にも同じような変化が起きているのかもしれません。
ストロベリー抹茶は、日本でも定着するのか
海外のカフェでは、抹茶にストロベリーやマンゴー、ココナッツなどを組み合わせたドリンクを見かけます。
日本人からすると、少し戸惑う組み合わせかもしれません。
しかし、抹茶のほろ苦さと、苺の酸味や甘みは、味の構成としては決して不自然ではありません。むしろケーキなら違和感なく感じます。
抹茶を伝統的な飲み物としてではなく、ひとつの素材として考えれば、さまざまな果物や乳製品と合わせて、今後も多岐に広がっていく可能性があります。
かつて甘い紅茶が日本に定着したように、現在は珍しく見えるストロベリー抹茶も、数年後には日本の夏の定番になっているかもしれません。
味覚は、生まれつき決まっているものではありません。
日本人も子供の頃からワサビを好んで寿司と合せていたわけではありません。
時代や環境による固定概念はあるものの、新しい経験や成長によって少しずつ変わっていきます。
基本のアイス抹茶ラテ
まずは、抹茶の風味を感じられるシンプルな抹茶ラテから試してみてください。
材料
- 抹茶 2g
- 70〜80℃のお湯 30ml
- 牛乳 150ml
- 氷 適量
- シロップ お好みで5〜10ml
- 今回は薄茶やラテとしておすすめの上林春松本店「琵琶の白」を使ってみました。
作り方
- 抹茶を茶こしでふるい、器に入れます。

- お湯を加え、茶筅でダマがなくなるまでよく混ぜます。
- グラスに氷と牛乳を入れます。この時、氷はグラス一杯まで入れてください。

- 溶いた抹茶を静かに注ぎます。

- 甘さを加える場合は、シロップを少量ずつ加えて調整します。
抹茶の味をしっかり出したい場合は、抹茶を3gに増やします。最初から甘くしすぎず、抹茶の苦味をわずかに残す程度に仕上げると、香りとミルクのバランスが整います。
抹茶ラテに向く抹茶とは
抹茶ラテには、必ずしも高価な濃茶用抹茶を使う必要はありません。
ミルクに合わせても色と香りが残り、適度な渋みや苦味を持つ抹茶が向いています。
特に、色が鮮やかで輪郭のある味わいを持つ「やぶきた」などの品種は、牛乳のまろやかさに負けにくく、すっきりとした抹茶ラテに仕上がります。
一方、苺やシロップを合わせるアレンジラテや、加熱する菓子には、薄茶用の上級抹茶よりも、味と色がしっかりしたラテ用・加工用抹茶の方が適しています。
抹茶は価格だけでなく、どのような飲み方をするかによって選ぶことが大切です。
この夏も、お茶のある時間を
甘い緑茶も、無糖の緑茶も、抹茶ラテも、それぞれの土地や暮らしのなかで生まれたお茶の楽しみ方です。
大切なのは、自分が心地よいと感じる甘さを見つけること。
暑い季節には、こまめな水分補給を基本に、たくさん汗をかく場面では塩分も意識してください。
抹茶ラテの甘さは、疲れたときのエネルギー補給にはなりますが、熱中症対策を抹茶ラテだけに頼ることはできません。
無糖で抹茶の香りを楽しむ日もあれば、少し甘くしてミルクと合わせる日があってもよい。
茶道のように飲む抹茶だけを多い求めずいろいろな可能性があって良いと私は思います。
今日の最高気温は37度。日本の暑い夏がいよいよ始まりました。
この夏も、それぞれの飲み方で、お茶のある時間をお楽しみください。
薄茶用ですがラテとしてもおすすめ
Uji matcha with a perfect balance of umami and astringency.
(鮮やかな色と甘みのある高級抹茶)
(Premium matcha with vibrant color and a sweet flavor)
A smooth, delicious cup with little bitterness.
(風味と苦味がしっかりした「加工用抹茶」)
(“Matcha for Processing” with a rich flavor and distinct bitterness)
A cup with a punch that holds its own against milk and sugar.




