公開日 2024年5月17日 最終更新日 2024年5月17日
京都では7月の祇園祭、10月の時代祭とともに5月15日に行われる葵祭の3つの祭りが京都三大祭と呼ばれています。
今回は下鴨神社さんの境内で行われる社頭の儀と、平安装束姿の総勢500人が新緑の京都を行列する路頭の儀を写真でご紹介します。
平安時代から続く典雅な行列
束帯姿の近衛使代や十二単の斎王代など王朝絵巻さながらの行列が京都御所を出発し河原町通を上がって下鴨神社、上賀茂神社へと向かう約8キロメートルの道のり。
この行列は平安時代から続く祭りでその典雅な行列は平安時代から人々の憧れで、今もなおその行列の美しさは続いています。
行列は近衛使代を中心とした本列と斎王代に従う斎王代列に分かれ、総勢500人、馬36頭、牛4頭、牛車2台、斎王代の乗る腰輿(およよ)1台からなる1キロにも及ぶ大行列。
10時30分に京都御所を出発した行列は京都府立病院などのある河原町通を上がり、出町柳を通り下鴨神社へと向かいます。下鴨神社では勅使が御幣物を供え御祭文を奉上する「社頭の儀」が行われるため、そこへ向かう行列を路頭の儀と呼びます。
5月15日の京都御所はいつもの静かな雰囲気とは異なりカメラを構えた観光客で大変混在します。
毎回、牛や馬がちょっと機嫌損ねたりとトラブルがあったりするのですがこの日は順調に11時40分に行列が下鴨神社の参道に到着しました。
行列が到着する前の下鴨神社境内の様子。葵祭の当日は社頭の儀が終わる午後2時過ぎまで祭礼のために立入禁止となります。
11時40分 下鴨神社に行列が到着
約一時間に及ぶ路頭の儀を経て、糺の森へ行列が到着する検非違使尉や御弊櫃をかついだ近衛使代列が社頭の儀を執り行う下鴨神社本殿へと向かいます
行列は南口鳥居で祭礼を行う勅使と別に牛車や馬などは楼門の外で待機をする。
行列の大半は午後から上賀茂神社へ向かう路頭の儀に備えて下鴨神社で一旦休憩をする。
下鴨神社の駐車場で休憩をしているのでその様子をちらっと覗くのも祭りの裏側が知れて面白いかも。
腰輿(およよ)から斎王代が降りて童女に裾を持たせて歩いて拝殿へ向かいます。
十二単衣を着用した斎王代は神事に臨む前にさらに衣を召されて装束の重量は13キロにも及ぶという。
童女役の子どもたちも御所から頑張って歩いて到着しました。
斎王代の乗る腰輿(およよ)には前に4人後ろに8人の童女を従えています。
斎王代と同じく心葉などで髪を飾る采女や女官内侍、騎女(むなのりおんな)と呼ばれる馬で参列する女官などが続々と社頭の儀へ向けて本殿に入ります。
舞殿の前で黒の装束を着た勅使が内蔵使代から御祭文を受け取る様子
(写真左側のピンク色の着物を着た女性はベルサイユのばらの作者池田理代子さん!下鴨神社と末社の河合神社の御朱印イラストを手掛けたことから今回参列者代表として招待されたそうです)
勅使により舞殿で御祭文が奏上されると、陪従が歌を唱え、舞人が優雅な東遊(あずまあそび)を奉納します。
社頭の儀が行われる間は楼門の扉は閉められています。
下鴨神社で1時間半におよぶ社頭の儀。このあと斎王代や検非違使代は午後2時20分に上賀茂神社へ向かう路頭の儀としてまた出発します。
下鴨神社の馬場では競べ馬も
下鴨神社の馬場では社頭の儀が行われている間、走馬(そうめ)の儀が最後に行われます。
数頭の馬が河合神社から繰り返し疾走し、これにより下鴨神社では社頭の儀が全て終了となります。
馬場の脇では屋台や和菓子屋さん、酒蔵などいくつか出店されており華やかな行列とは一味違った身近な祭りっぽさがあります。
下鴨神社から加茂街道を通り上賀茂神社へ
下鴨神社から場所を移動して路頭の儀を見るために賀茂川沿いの加茂街道へ移動してきました。
この場所は、北大路橋西詰の交差点を少し下がったところ。
14時20分から上賀茂神社へと向かう路頭の儀を見ようと出雲路橋あたりは多くの人で混雑するんですが、少し上がったこの辺りはあまり混み合うこともなく賀茂川を眺めながらのんびり行列が到着するのを待っていました。
行列の先頭は乗尻(のりじり)と呼ばれる騎馬隊で、左右各3騎が並んで通ります。この人たちは上賀茂の競べ馬の騎手でもあります。
新緑の加茂街道を進む検非違使志。
検非違使庁の役人で、警察司法の担当者。六位の武官。行列の警備を担う存在です。
検非違使尉(けびいしのじょう)
尉、志ともそれぞれ調度掛(ちょうどがけ)に弓矢を持たせ、鉾持(ほこもち)に鉾を持たせて武装しています。
鉾持(ほこもち)付近の白丁
いわゆる検非違使の雑用使いで傘や沓などを持ちます。
山城使(やましろのつかい)
山城介で国司庁次官、五位文官。洛外は国司の管轄なので警護と案内にあたります。
内蔵寮史生(くらのりょうししょう)
御幣物を司る判任文官七位です。
馬寮使(めりょうつかい)
走馬担当者で左馬允(さまのじょう)。六位文官。
写真だと分かりづらいのですが背中に弓矢を調度掛に持たせています。
ちなみに写真左の方、トランシーバーで行列が今どの辺りにいるかを前後の行列に伝えています。
1キロに及ぶ行列なのでその都度、市内を東西に走る通りなどを警察が止めながら行列が順調に進める大事な役割。
葵祭といえば藤の花で飾られた牛車。ギィギィと軋むこの音が葵祭の行列に特に印象に残ると思います。
俗に御所車といわれ平安朝の時代から乗用車として用いられてきましたが、現在は勅使が乗ることはなく行列の装飾的役割になっています。牛が牛車を引き、前に2人の可愛い牛童(うしわらわ)、車方、大工職などの車役が、替え牛とともに従います。
北大路を過ぎた辺りでこの牛は立ち止まってしまったようで替えの馬と交代したそうです。
牛もずっと歩きっぱなしは疲れるでしょうね。
馬に乗るのは下鴨神社で東遊を待った舞人(まいうど)
近衛府五位
舞人にはそれぞれ雑色、舎人、白丁が従います。
近衛使代(このえつかいだい)
この行列の中で最高位の人です。束帯姿で馬には銀面を被せています。
- 風流傘(ふりゅうがさ)
行列を豪華にするために溢れんばかりの花(造花)を飾っています。
風流傘は取物舎人(とりものとねり)という4人が交代で持ちます。胸元には同じ造花が飾られています
- 陪従(べいじゅう)
近衛府五位の雅楽を演奏する武官。衣には蛮絵と呼ばれる獅子、熊、唐草などの図柄が入っている。
先の風流傘とは造花が少し異なる。男性で構成された近衛使代列の結びとなる。
行列を彩る斎王代列
近衛使代列が過ぎると女性で構成された斎王代列が加茂街道を華やかに彩ります。
前に4人の童女を従えて腰輿(およよ)に乗った斎王代が登場です。
行列で最も盛り上がるのが斎王代が来るこの時です。
斎王代
今年の斎王代は壬生寺の娘さんが務められました。
写真の真ん中の青海波文様の衣をつけているのは食事・供奉に奉仕した後宮の女官采女(うねめ)
後ろの馬に乗っているのは騎女(むなのりおんな)
騎馬で参向する斎王つきの巫子です。
蔵人所陪従(くろうどどころべいしゅう)
雅楽を演奏する文官でそれぞれ楽器を持って行列を歩きます。
斎王代の牛車
男性が務める近衛使代列と同じく斎王代の行列の最後も牛車が努めます。
約500名で作らる平安時代の優雅な行列
10時30分に京都御所を出発した行列は下鴨神社で社頭の儀をおこない、14時20分に下鴨神社を出発、加茂街道を15時ごろ通り15時30分に上賀茂神社へ到着し社頭の儀を行うのが葵祭の行列です。
行列を先頭から最後まで見ようと思うとおおよそ30分ぐらいかかります。
実はこれまで葵祭をやっているところに偶然通ったり、通行止めして行列が通るのを眺めていたことはあったのですが、こうやってしっかりと見ることが今までありませんでした。
一度くらいはちゃんと見ようと今回に至ったんですが、いやーーー良かった。
みなさんも一度は葵祭の行列をぜひご覧ください。
おすすめです!