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「節分」は「せち別れ」ともいい季節の分かれ目である立春・立夏・立秋・立冬の4つの季節の前日を節分と呼んでいましたが、現在は立春の前の日までを節分と呼ぶのが一般的となりました。この節分の日に恵方巻きを食べるという風習が全国で一般的になっていますが、古くは玄関の外に柊鰯(ひいらぎいわし)の魔除けを掛けて鬼が入らないようにと魔除けの意味を込めて作っていました。現在ではあまり見かけなくなりましたが、柊の枝と鰯さえあれば誰でも簡単に作ることができるのでご紹介します。
柊鰯を作るにあたって、必要なのは柊の枝と、鰯の頭だけ。
鰯の頭は干物のメザシでもいいのですが、頭が小さく見劣りしてしまいます。今回は見た目重視で生の鰯を使い、せっかくなので胴体の部分はしっかりと煮詰めて夜のおかずに「鰯の辛煮」を作りましょう。
【柊鰯の作り方】
〈柊鰯に必要な材料〉
柊の枝・・・1本
鰯の頭・・・1個
台紙・・・1枚
針金・・・1本
画鋲・・・2個
材料はたったこれだけです。それでは早速作っていきます。
鰯の頭をしっかりと焼く
鰯の頭だけを切り落としてしっかりと焼きます。鬼はこの鰯の生臭さと煙を嫌がるそうです。そして何よりも家の外に飾るので焼いたほうが生臭さを消すことができます。写真はご注文を頂いていたので多めに焼いてますが、ご自宅でやる際は頭一つで構いません。
柊の枝に刺す
よく焼いた鰯の頭を柊の枝に刺します。柊の枝はこの時期、花屋さんで売っていたりします。花もついていない枝だけなので100円〜とお値打ちです。柊の葉はチクチクするので怪我のないようにお気をつけください。
このチクチクした葉が目や体を刺して「わ〜!イタイイタイ!」と帰ってもらうのです。
そこに焼いた鰯の頭を刺すのですが、柊の枝を目に通して目刺しにしたり口から出したりと地域によって様々なようですが、私は口から出します。このほうが簡単です。よく焼いた鰯の頭の生臭さと煙で鬼を近づけさせず、それでも近寄ってきた鬼は柊のチクチクで刺します。
鬼さんが気の毒になりますが、これも古来からの風習と魔除けのためです。
柊鰯の飾り方ですが、以上のような内容から室内に飾っては意味がないのでお家の外の柱などにテープなどで留めると簡単です。
ただし、鰯の頭というのは油がありこれが柱や壁などに付くのが嫌だなという方は、写真のように厚紙を用意して、枝を2箇所ほど針金で留めてしまえば心配ありません。
恵方巻をスーパーやコンビニで買って食べるというのも悪くはないのですが、昨今の報道にあるような過剰な廃棄処分のきっかけとなる風習よりも柊鰯のほうが現代にあっているのではないでしょうか。
柊鰯を片付けるタイミングはいつでも良いみたいで、節分が終わってすぐに片付けたり、立春を迎えて数日の間は掛けたままなど様々です。
片付けたら半紙などの白い紙にくるんで神社で焚き上げてもらうか、灰になるまでコンロで焼く、そのままご自宅のゴミ箱へ捨てるなどお住まいの地域に合わせたしまい方が一番いいと思います。
柊鰯は魔除けなのでゴミ箱へと言うのも気が引けますが、暮らしの環境と風習に合わせてください。
さて、せっかく生のイワシを買うならお弁当のおかずにも晩酌の肴にもなる「鰯の辛煮」を作りましょう。実際は柊鰯と鰯の辛煮は同時進行で行なえます。それではレシピをご紹介します。
【鰯の辛煮の作り方】
〈作りやすい分量〉
鰯・・・中サイズ8尾(約700g)
生姜・・・50g
A水と酢・・・各150cc
B濃口醤油と酒・・・各150cc
鰯の下処理をする
今回はしっかりと煮詰めて骨まで柔らかい保存食を作ります。15〜20cmくらいの新鮮な鰯を買いましょう。イワシは字の通り「魚」へんに「弱い」と書きます。それだけ鮮度がすぐに落ちてしまう魚です。
ポイントは目が澄んでいてお腹にハリがあり、ウロコがあるもの。ウロコと言っても鰯のウロコはスーパーに出るときにはほとんど剥がれていますが、これも美味しい鰯を見つけるポイントの一つです。
買ってきた鰯の頭は柊鰯に使います。包丁で頭を切り落とし、内臓を取ります。鰯の捌き方が分からないという方は、ネットで調べてください。意外と簡単です。鰯8尾やり終わる頃にはマスターしていますよ。
頭と内臓を取った鰯を洗っていきます。ボウルに水800ccと塩大さじ1杯を入れた塩水で丁寧に洗い、水気を切って2cm幅の筒切りにします。
鰯を煮る
鍋に筒切りにした鰯を並べていきます。この時に鰯の身が鍋にひっつきやすいので竹の皮を敷くのですが、一般家庭ではあまり必要としないものなのでキッチンペーパーで代用します。キッチンペーパーを鍋に敷き、切り口を上にした鰯を丁寧に並べていきます。
生姜を皮付きのまま薄切りにして鰯の上に散らします。
ここにAの水と酢を加えて火にかけます。強火にして沸いてきたら弱火にしてアクを取り落し蓋をします。
Aの水と酢がほとんど無くなるまで煮詰めていきます。ここで酢を入れて煮ることにより骨が柔らかくなります。少々時間がかかるので、この間に柊鰯を作るために頭を焼きましょう。
煮詰めて完成
Aが煮詰まったらBの濃口醤油と酒を入れて再び落し蓋をして弱火にかけます。今度はその煮汁が1/4くらいの量になるまで煮詰めていきます。たまに煮汁を鰯の上にも掛けて全体に味を行き渡らせてください。
この間に、焼いた鰯の頭を柊に挿して玄関に飾っておきましょう。
煮詰まったら完成です。これだけ煮詰めると5日は日持ちします。身も骨も柔らかい辛煮はこの時期熱燗によくあいます。
栄養価の高い鰯を食べて、家の玄関には魔除けの柊鰯。あとは手洗いうがいさえしっかりすれば、健康に節分を迎えることができます。
恵方巻も美味しくていいのですが、自分で買って作る節分は身体にも環境にも優しいのでぜひ一度お試しください。
柊鰯の頭を小さいものにするなら、定番の生姜煮を作ってもいいかもしれませんね。