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公開日 2021年9月25日 最終更新日 2021年10月12日
秋といえばお月見。巷ではこの時期にバーガーバーガーと言っていますが、今回は雅に秋の月見を楽しんできました。
京都市左京区の下鴨神社で中秋の名月に催される『名月管絃祭』
旧暦8月15日は「十五夜」「中秋の名月」といわれ、今年(2021年)は9月21日がその日に。
今回は名月管絃祭の様子をレポートします。
世界遺産 下鴨神社とは
下鴨神社は京都市左京区にあり、正式名称は賀茂御祖神社(かもみおやじんじゃ)
加茂川と高野川の合流する鴨川デルタの北に建つ神社でユネスコの世界文化遺産にも登録されています。
名月管絃祭が行われる橋殿だけでなく楼門や舞殿など数多くの建物が重要文化財に指定され、本殿は国宝に指定されています。
境内は史跡に指定されており、縄文時代から生き続ける広さ3万6千坪の原生林「糺の森」は葵祭の流鏑馬神事や夏の下鴨納涼古本市が行われることでも有名で市民の憩いの森でもあります。
参道には京都の名店が並ぶ「かがりび市」
名月管絃祭は午後5時半より行われます。
参道では「かがりび市」が開催されてこれもまた名月管絃祭の楽しみのひとつ。
ですが、、、いつもなら参道の両側にずらりと京都の名店が立ち並ぶはずが、今年はコロナの影響で3分の1ほどの出店となっていました。
それでも一番手前の出町ふたばの豆餅は早々に完売ということで、さすがの人気ですね!
御戸代会を現代に伝える神事
下鴨神社の名月管絃祭は平安時代から続いており、朝廷より下鴨神社に神様へ捧げる稲を作る神田「御戸代(みとしろ)」として田地が奉納され、神様に実りの祈願と感謝と報告、すなわち五穀豊穣、天下泰平を祈願して雅楽や神楽などの芸能が奉納される御戸代会(え)の神事です。これまでは非公開でしたが昭和38年から一般に公開されるようになり、京都では中秋の名月を代表する行事の一つとなっています。
一般公開されるようになってからは、これら古代からの流れをくんだ神事の後、管絃の調べを聴きながら名月を観賞する秋の一夜を過ごします。
中秋の名月に月を愛でる観月祭は大覚寺の大沢池に船を浮かべる”観月の夕べ”など市内各所で行われますが、下鴨神社の名月管絃祭は月を見て楽しむ娯楽性ではなく御戸代(みとしろ)のお祭りが元になっているのが特徴です。
舞殿には月見団子や果物、ススキと萩が飾られて秋らしい景色に。
今年の開催はコロナでどうなるかと心配していましたが、観覧席は下鴨神社崇敬会の会員と氏子さんなど招待客数名に用意されマスクの着用のもと静かに行われました。
管絃祭に先立って神事が午後5時半から行われる
午後5時を過ぎると中門にて神事がはじまります。
中門での神事が終わると舞台はススキと萩の飾られた境内東の橋殿(はしどの)へと移り、舞台にはかがり火がたかれます。
私自身も下鴨神社の崇敬会に入っているため席をご用意いただけたのですが、、、自分で選んだ席と風向きの相性が悪く火の粉が!!このあと場所移動しました。
残念ながら空には雲がかかっていますが、お月さんが顔を出してくれることを祈りながら演奏が始まるのを待ちます。
また、いつもは斎庭に設けられた観月茶席でお抹茶をいただきながら名月を楽しむ事ができるのですが、飲食に関わることなのでコロナの影響でこちらは中止となりました。
京都の夜空に雅な音色が響く
平安の宮廷社会から生まれた雅楽奉納から管絃祭は始まります。
雅楽では音楽のみ演奏するのを”管絃”と呼び、舞が伴うものが舞楽となります。
管絃曲から五常楽(ごじょうらく)と陪臚(ばいろ)が厳かに演奏されました。
橋殿の下には御手洗川
箏と琴。どちらも「こと」と読んでも楽器は違う。
簡単に言うならば違いは写真のような柱があるかないか。
だそうです。
これ、隣の方に教えていただきました。
琴綾会により風にのってとジュピターの2曲が演奏されました。
このように次々と音楽が奉納されていくのですが、この橋殿の下は空間になっていて下には御手洗川が流れています。この空間が音の響きを良くしており、演奏を捧げる奉納舞台に最適な構造となっています。
この時間になると空もすっかり夜空へと変わり、かがり火が辺りを照らすようになります。
あとはお月さんが出てくれれば良いのですがまだまだ雲の中です。
次に演奏されるのは筑前琵琶。
こうゆう機会でもないと琵琶の音色というものを聴けるチャンスがないので貴重な機会です。
物語を優雅に語りながら演奏するこの姿はかっこいいなぁと惚れ惚れします。
京都旭城会によって演奏されたのは京都の四季や風物詩を謡う京洛の花(きょうらくのはな)と、平安時代中期に羅生門で鬼と戦った渡辺綱の武勇伝を謡う羅生門の2曲でした。
羅生門の演奏もそれはまた素晴らしかったのですが、ここに来てなんと雨が。
空の神様は気まぐれなようで、朝から傘を必要とするような予報でもなかったので私を含めて多くの人が楼門の屋根の下に雨宿りをしながら演奏を聴かせていただきました。
時折りパラパラと降る雨を気にしながら、管絃祭も終盤にかかります。
普段は下鴨神社に務める下鴨古楽会による管絃と王朝舞の奉納です。
雅楽の演奏に合わせて登場したのは十二単をまとった女性。動くだけでも大変なのに十二単の平安貴族舞はいかにも雅と言った雰囲気で観る人みんなうっとり。
下鴨古楽会からは越殿楽(えてんらく)と鶏徳(けいとく)が奉納されました。
ちなみにこの橋殿では能も舞っていたことがあり糺能と呼ばれていました。あいにく先の大戦で途絶えてしまいましたが橋殿の奥には細殿という建物があり、これらをつないで能を舞っていたそうです。
いよいよ舞楽の奉納
琴綾会によるふたたびの箏が始まるとまたしても雨。
どうやらお月さんを眺めることは難しいかなと周りの方たちも思い始めた頃に、いよいよ名月管絃祭のメインとなる舞楽の奉納が始まりました。
まず最初に平安雅楽会の演奏とともに舞うのは源氏物語や枕草子にも登場する納曽利(なそり)
朝鮮半島から伝来した舞で竜が楽しげに遊ぶ姿を舞で表現しています。
こちらはおなじみ白拍子(しらびょうし)
平安時代から鎌倉時代にかけて流行した歌舞の一つ。男装が特徴で平家物語にもこの舞は登場します。
管絃祭の奉納舞台もこの演目で最後。
蘭陵王(らんりょうおう)は中国大陸から伝来した舞で、古代中国の将軍蘭陵王長恭が周の大群を打ち破った史実に基づいて作られています。蘭陵王が戦場に赴く際は常に厳しい仮面をつけて戦い多くの武勲あげたことから、当時の人々が喜んで祝にこの舞を舞ったと伝えられています。
午後6時から始まった名月管絃祭の奉納舞台は2時間半ほどで終わり。この頃にはすっかり雨も上がって秋らしい涼しさに辺りは包まれていました。
舞台が終わると脇に飾られていたススキや萩のおすそ分けが巫女さんからいただけます。2メートル近くある立派なススキでした。
ちなみに地域によっては十五夜に捧げたススキの切り口を傷口に垂らすと治るという伝承もあるそうです。
大事に持ち帰って店のショーウィンドウに飾らせてもらいました。
せっかく下鴨神社へ行くならここに寄り道を
というわけで、下鴨神社の名月管絃祭をレポートさせてもらいました。
ちなみに中秋の名月と言えば月見だんごが食べたいもの。この日は午前中に市内の職人さんのところで仕入れをすませて、出町柳の出町ふたばで月見だんごときな粉をまぶした栗餅を買ってから下鴨神社へ向かいました。
京都の月見だんごってあんこで包んだ頭からひょこっと頭を出した里芋のような形が特徴です。
ふたばの前を通って行列ができていたらやめ、空いていたら迷わず買う!こうゆう私みたいな人多いと思います。
(並ぶのが嫌な人は予約がおすすめです)
楼門を出ると授与品として月見酒と月見だんごが下鴨神社により販売されていました。ちなみにお酒は丹山酒造。
家に帰ってこの日の平安雅な夜を思い出しながら月見酒とお団子で中秋の名月の名残りをいただきました。
場所:下鴨神社
開催日程:中秋の名月(旧暦8月15日)
時間:17:30〜
HP:https://www.shimogamo-jinja.or.jp/rituals/